工場の人手不足は、広東省の珠江デルタ、上海を中心とする長江デルタは言うに及ばず、最近は内陸の都市にも及んでいる。では、13億人もいる中国で一体なぜ人手不足は生じているのだろうか?【人口構成の変化】中国の人口は2030年頃を堺に減少に転じる。労働力人口はそれよりも早い2015〜2020年頃にピークを迎えるとされている。また一人っ子政策により2010年から若年人口が大幅に減少するとともに就学率の上昇に伴い若年労働者の労働参加率が低下することが予想される。
但し、人口構成の変化は今後懸念されることであって、2000年代に入って深刻さが増してきた
人手不足の要因ではない。そこで、労働力の供給側と、需要側の変化を多面的に捉え
人手不足の要因分析を試みる。
【供給側の要因】上記のように労働力の供給量は減っていないが若者の意識の変化等により、働く場所の多様化が進み、工場での
人手不足の要因となっている。
(1)賃金の上昇、生活レベルの向上に伴って、工場で日夜働くことを好まない若者が増加している。かつて、故郷の親元へ仕送りのために深夜まで仕事し、寮に帰って寝るだけの生活を送っていた若者も、自分の時間を大切にするようになった。給料もそれなりに増え、髪を染め、休日には流行ファッションでショッピングもするようになった。
(2)もともと中国には、終身雇用制度の慣習はないが、特にワーカーレベルの労働者は、定着率が非常に低い。3ヶ月から6ヶ月でその工場をいとも簡単に辞めてしまい、1年も立つと工場の労働者はすっかり入れ替わってしまう。
春節の期間は1ヶ月から2ヶ月は故郷へ戻り、また働くために都市部へ出かけてくるが、1年に2,3回仕事を変えるとすると、次の職探しでまた2,3週間は遊んでしまうことになり、1年通しての仕事をしている期間は、多くて9ヶ月ぐらいではないだろうか?
(3)各地に多くの大学が設置され、高学歴化が進んでいることにより、工場の仕事に就く若者が減っている。かといって、大学卒業しても自分の希望する仕事と給料がもらえる会社は少ない。人材市場でうろうろ職をさがしている大学卒業生も多々見受けられる。
(4)生活レベルの向上により、サービス産業が発展、若者が華やかなサービス業に吸収されている。
(5)内陸部の経済振興策により地方都市も豊かになり、雇用の需要が生まれ、一定の収入が得られるのであれば、わざわざバスや列車で何時間も揺られて沿岸部へ行く必要もないと考える若者も増えてきている。
(6)もう一つ付け加えるなら、日本と違いいわゆるシルバー世代(50歳〜60歳)は、中国ではほとんど工場の仕事には就いていないという実態がある。
彼らは、都市部では共働き夫婦の子供の面倒を見るのが日課になっている。また農村部では都市部で働く両親に代わって、田舎に残された孫の世話や、農家の仕事を細々と続けており、日本では考えられない若さで「隠居生活」を送っている。近代的な企業の歴史が浅い中国では、この年代の人々は工場での経験がなく、適応できないのが現状ではないかと推測する。
【需要側の要因】なんと言っても、2000年代に急激に成長を遂げた来た沿岸地域の工場の労働力の需要が大きく伸びたことが人手不足を招いていることは事実であるが、もう少し詳しく掘り下げて要因を分析する必要がある。
(1)労働集約型産業の工場では、内陸部から無限に供給される労働者を、大量に集め使い捨て扱いしてきたが、そのような手法では、だんだん労働者は集まらなくなってきた。しかし工場の人事部門では相変わらず従来の手法をとっている。
(2)内陸部でも同じ手法で労働者を確保しようとしているため、豊富な若者のいる内陸部であっても安定した労働力が確保できず、沿岸部と同様に人手不足を招いている。
(3)工場では、競争激化に伴い、コストダウン、生産性向上の要求が強くなり、生産設備の導入や、工程の改善により省力化を図ろうとしているが、なかなか進んでいない。
(4)工場の競争力を高めるための技術者の需要が急激に増してきているが、経験有る技術者が不足している。産業の高度化に伴い、工場では一般労働者よりむしろ技術者不足の方が深刻になってきた。
【人手不足の本当の要因】労働集約型の工場では、求人と解雇の人数が受注の増減とともに常に変動している。経営者は注文の多い時期には労働者の確保に血眼になり、端境期にはクビを切ってコストを抑えてきたのである。
人手不足が叫ばれている一方、中国全体の失業率は8%に達するとされる。15〜29歳までの若者の失業率は9%と若者の就職難が社会問題化しつつある。人手不足の根本の原因として、中国の工場では労働集約型経営からの脱皮が遅れ、需要と供給のギャップが生じていることが上げられる。
企業の経営高度化にとって重要なのは、生産設備をアップグレードすることより、むしろ一般労働者から技術者に至る人材マネジメントの発想を変えることかもしれない。中国でもこれから高齢化社会を迎え、シルバー世代の活用も重要になってくる。
多くの外資企業の中国進出によってパソコンや自動車の製造技術はもたらされたが、人材マネジメント手法の導入だけは取り残されてしまっているのが今の中国の現状ではないか。

(参考)
中国 2009年最低賃金の動向中国 2010年最低賃金の動向中国 2011年最低賃金の動向中国 2012年最低賃金の動向この記事に賛同して頂ける方、よろしくお願いします→
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